微粒子企業の身の丈ご機嫌ビジネス

【毎日配信】税理士の視点から見る経営や税務のことを書かせていただいています(^^)

共同経営って、簡単なようで・・・

  

親しい友人と、または、志が同じ仲間と一緒に仕事をしたい!
共同経営をして、利益を2人で分けたい。
・・・というお話は結構聞かれるもの。
今回はその「共同経営」について考えていきたいと思います。

 

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【個人事業としての共同経営】

共同経営を志した当初は、お互いに資金がないことが多いですね。
そういった時に手っ取り早いのは、個人事業として共同経営の形を整えていくことでしょう。
ただ、矛盾にお気づきでしょうか?
個人事業であるのに、共同になるともはや「個人」ではなくなります。


1.どちらか一人が社長にならなければならない
個人事業ですから、個人一人としての事業となります。
裏を返せば、共同経営とはいえ、どちらか一人が社長となる必要があります。
じゃあもう一人は?
もう一人の人はその社長のもと雇われる「従業員」とならざるを得ません。
これは、個人事業としての性質上やむを得ないことです。

 

2.利益はどうなるの?
仮に、共同経営のもと、売上が入ったとしましょう。
するとどうなるでしょう?
まず初めに社長に売上金額の全額が入ります。
その中から従業員である共同経営者に給料を払うわけですね。
ここで早速問題が。
社長である人に入る売上は「事業所得」、給料としてもらう共同経営者は「給与所得」として、税務署へ申告することになります。
事業所得は売上げからかかった経費を自分で計算して申告します。
一方給与所得は税務署から決められている「給与所得控除額」というものが自動的に経費になり、年末調整又は確定申告により申告します。
所得の種類が違うため、かかってくる税額も変わってきますね。
この時点で、利益折半ということが夢物語になってしまいます。

 

3.保障にも差が出ます。
社長と従業員の関係であるため、従業員である共同経営者は当然に労災保険雇用保険の被保険者となります。
同じ事業をやっているにも関わらず、保障に差が出てしまうわけです。
それに、労災保険料は社長が払わなければなりません。
雇用保険料も一部は従業員の給与から預かりますが、社長が払っていくことになります。

このように、共同経営といっても実態は雇用関係となってしまうのです。
それに、同じ共同体の中で利益を折半していくということは、上に書いた通り絵に描いた餅でありますし、どうしてもお金が絡むため、人間関係にもひびが入りやすいという現状があります。
仲の良い兄弟でも、相続になると途端に犬猿の仲になってしまうという悲しいことは聞かれたことがあるでしょう。

 

4.解決策はあるのでしょうか?
ただ、同じ志を持つ者同士、やはり一緒に仕事をしたいという気持ちは強いことでしょう。
何か解決策はあるのでしょうか?
共同経営とは形が違いますが、方法はあります。
具体的には、両者ともに個人事業主として開業し、業務を分けることです。
AさんとBさんが共同でお仕事をするとしたら、まずAさんの名前で仕事を取り、その仕事を外注(請負契約)としてBさんに振ります。
例えば、1,000万円の仕事をAさんが取ったとしたら、500万円を外注費としてBさんに払うわけですね。
これでAさんの手元のお金は1,000万円-500万円=500万円。
Bさんの手元のお金はAさんからもらった500万円。
一件落着ですね。
では、ここに経費が掛かってきたとしたらどうしましょう?
仮に、10万円のパソコンを買ったとしましょう。
これをAさんとBさんに分けることができるでしょうか?
パソコンを2つに割るわけにもいかないですし、10万円の領収書をAさんとBさんに分けるというのもなんだか変な話ですね。

 

5.個人事業で共同経営はやめた方がいい
あくまでも私個人の私的な視点で言わせていただくならば、個人事業での共同経営は上に書いたような事情からやめた方がいいものと思われます。

 

【法人としての共同経営】

「でも、どうしても共同経営がしたいんです!」
個人事業であれば難しいのですが、法人であればある程度可能です。
法人とは、AさんでもBさんでもない、別の人格を持った法律によって作られた「人」です。
法人という組織のもと、両者ともが代表取締役になることもできます。(ただし、対外的に見て、どっちが代表かわからないという外部からのクレームはあるかもしれません。)
また、法人の得た売上から「役員報酬」という形で給与として両者に払っていくため、給与という形を持って折半すれば、キレイに半分にはなっていきます。
詳しい話は他にもありますが、簡単に述べるとそんなところです。

 

【覚悟を持ってやってください!】
人と人とが同じ仕事を共にやっていくわけですから、いろいろな問題が出てくることでしょう。
事業がうまくいってもうまくいかなくても、時間が経つとともに、お互いに思うところが多く出てくるものです。
また、法人であれば、設立費用として約25万円がかかり、利益が出なくても毎年7,8万円の税金がかかってきます。
(こちらの記事もご参照ください↓)

 

everydayrunchange.hatenablog.com


共同経営を考えられるのでしたら、人間関係上のこと、現実的な資金のことをしっかりと考え、後悔のないように手続をしていってくださいね。

 

古くからの有名な会社でさえ、お家騒動でもめている昨今。
赤の他人との仕事になると・・・やはり私は怖くならざるを得ませんね・・・