微粒子企業の身の丈ご機嫌ビジネス

【毎日配信】税理士の視点から見る経営や税務のことを書かせていただいています(^^)

給与はどう考える?個人と法人の違い。

個人事業者と法人の違いでよく言われるのが、


個人事業者は自分自身に給与を支払うことができないが、
法人は自分自身に給与を支払うことができる。


ということです。

でもこの言い方、少し誤りがあることにお気づきでしょうか?
個人事業者=自分・・・となるので、個人事業者の言い方は合っていますね(^^)
では、法人はというと、
法人≠自分
つまり、法人は法律が人格を与えた人であり、
自分自身ではありません。
なので、法人からもらう給与というのは、
自分自身に対するものではなく、第三者からの給与なのです。
だから認められるんですね(^^)

 

では、個人事業者と法人の給与に対する考え方のこの違い・・・
税金面で見たらどうでしょう?

 

結論から言えば、


給与所得控除の分だけ、法人の方がお得になります。

 

さて、ここで、

「所得」とはなんでしょう?

サラリーマンの場合、会社からお給料をもらいます。
このお給料での収入を「給与収入」と言います。
ここから、給与所得控除を引いたものが、
「給与所得」と言います。

では、給料をもらわず、自分で稼いでいく個人事業者はどうでしょう?
事業での収入を一般的に「売上」と言い、
そこから事業にかかった「経費」を差し引いたものが、
「事業所得」となります。

なんとなく、見えてきましたか?(^^)

 

サラリーマンと個人事業者を並べてみてみましょう。

給与収入 = 売上
給与所得控除 = 経費
給与所得 =事業所得

・・・つまり、

上で言った「給与所得控除」というものは、
個人事業者でいう「経費」に当たるものなのです。

 

サラリーマンと言えども、仕事をするにあたって、
スーツ、カッター、ネクタイ、名刺入れ、文具、靴・・・など、
いろいろな物を買いそろえて仕事をする必要があります。
このようなことを考慮して、
国は

サラリーマンの給与については、
一律に給与の収入金額によって、控除できる経費を決めてしまっている

わけです。
この国が決めている一律の経費を「給与所得控除」といいます。

 

さて、本題に入ります。

所得税・住民税・法人税の総額を、
個人事業者の場合と法人の場合とで同じ条件のもと、比較してみます。

 

条件)利益が1,000万円出ています。(所得控除は基礎控除のみ考慮)

 

【個人事業者】
利益1,000万円に対する税金は・・・
所得税が約164万円
住民税が約97万円
合計261万円の税負担。


【法人】
利益が1,000万円出ているが、同額の給与を支払ったという前提。


法人税は利益1,000万円-給与1,000万円=0円
課税のベースが0円であるため、法人税も0円


所得税は、
給与収入1,000万円-給与所得控除220万円=給与所得780万円
この780万に対する所得税は約107万円
住民税は約75万円
合計182万円の税負担。


個人事業者は261万円、法人は182万円となり、
この計算では

79万円分、法人として給与を支払った方が、
個人事業者に比べて税負担が少なくなる

ことがわかります。

 

違いは、法人の利益を給与で打ち消している事だけです。
給与は社長である自分への収入ですから、
実質は、個人事業者の利益と状況は変わらない

わけです。

 

その給与として払った部分に対する
給与所得控除の部分だけ、法人の方がお得になっていることがわかります。


※ 法人から支払う給与は役員報酬となり、これは所定の時期に金額を固めて、
  それから1年間ほどは金額を動かせません。
  上記は仮に、利益と同額の給与を上手く支払うことができた場合という例です。